ホーム > 歯を抜けたままにすることの悪影響
「1本くらい歯がなくても…」と思われるかもしれませんが、実は歯がないと体にさまざまな影響を与えます。虫歯や歯周病で歯を失った場合、そのまま放置してしまうとどうなるのか?ここでは、歯を抜けたままにすることによる、全身への影響についてお話したいと思います。
健康な歯には、噛む(咀嚼)・飲み込む(嚥下)・発音のほか、見た目を整えるという働きがあります。ところが、歯を失ってしまうと、これらの働きがうまく機能しなくなって、体に次のような影響を及ぼします。
歯が抜けたまま放置しておくと、歯がない部分に向かって周囲の歯が移動したり、傾いたりするなど、歯並びに悪影響が及びます。また、噛みあう歯が徐々に伸びてくることで、噛み合わせにも影響することから、1本の喪失でもお口全体に大きな影響を与えます。
歯がないせいで片噛みが習慣になっていると、片側の歯が極端にすり減ることで、体の左右のバランスがずれてしまうため、肩こりや頭痛、腰痛が起こりやすくなります。さらに、片噛みは顎の関節の痛みや、顔の輪郭の歪みを引き起こすことがあります。
私たちのカラダは通常、骨吸収と骨再生を繰り返す「骨代謝」によって、一定の骨量を維持しています。ところが、歯を抜けたままにしておくと、咀嚼による骨への刺激がなくなるため、骨再生よりも骨吸収が進んでしまうことから、歯がない部分の骨が痩せてしまいます。
歯がないとしっかり噛めないため、食事の際に咀嚼が不十分になって、消化器官への負担が大きくなってしまいます。また、硬い物が食べられないからといって柔らかい物ばかり食べていると、食事の栄養バランスが崩れてしまうだけでなく、顎の筋力の低下にもつながります。
歯が20本よりも少ない人は、認知症なりやすいほか、転倒しやすくなることが分かっています。認知症や転倒によるケガは、お年寄りが寝たきりになる代表的な原因でもあることから、特に高齢者の方は、歯の治療をきちんと受けることが寝たきりの防止にもなるのです。
歯が失った時にどのような治療法を選ぶかは、部位や歯肉・骨の状態などによって異なります。機能性や見た目などを考慮して、自分に最適な方法を選ぶ必要があるため、それぞれの特徴を知っておく必要があります。
インプラントとは、チタンという金属が骨と結合する性質を利用した、人工歯根を骨に埋め込む治療法です。
インプラントが骨と結合することによって、自分の歯のようにしっかりと噛めるほか、単独植立が可能なため、周囲の歯に負担をかけることなく、治療ができるという特徴があります。ただし、十分な骨量がないと埋入が難しいことから、前歯のような骨量が少ない部分や、歯周病によって骨吸収が進んでいる場合は、骨造成の治療が必要になります。
部分入れ歯は、人工歯と歯肉にあたる床(しょう)を、隣り合った歯に金属のバネをかけて支える治療法です。
治療に時間がかからない反面、入れ歯を支える歯への負担が大きいため、バネをかける歯がダメになると入れ歯ができなくなるという難点があります。さらに、骨がやせてしまうと義歯が合わなくなるため、比較的寿命が短い傾向にあります。また、バネが目立つため、最近は金属を使わないノンクラスプタイプの部分入れ歯が増えています。
ブリッジとは、隣り合った歯を支台として、歯がない部分に橋を架けるように被せ物をする治療法です。
入れ歯に比べて噛む力が強く、2~3回の通院で治療が完了するのが特徴です。また、前歯のような目立つ部分は、オールセラミックにすることで、天然歯のような自然な白い歯にすることができます。しかし、支台となる健康な歯を削らなければならないため、中には治療に抵抗を感じる患者様もいらっしゃいます。
ここまで、歯がないことによって、体にさまざまな影響を及ぼすことをご紹介してきました。歯は、食べ物を噛む際や、話をする際に欠かすことのできない存在ですが、それ以外にも、体のバランスを保つために大きな役割を果たしています。
「他の歯で噛めるから」とか「外から見えないから」という理由で放置していると、体の何らかの不調を引き起こす恐れがあることから、たとえ1本でもしっかりと治療して、健康の維持につなげましょう。